一枚のフェンスと曇り空
ぎしりと音を立てる扉を開いて屋上に出ると、薄曇りの空が一面に広がっていた。心なしか、吹く風も湿り気を帯びていて胸に重い。
「負けたよ」
「そうか」
屋上のフェンスにもたれかかって座る彼女の横に立ち、空を仰ぐ。世界に蓋を落としたような天が、行く手を阻むように重く垂れ込めている。
「何も言わないんだな」
問うと、ぴくりと彼女の方眉が上がった。心外だな、と苦笑して、自分を仰ぎ見る。
「何を言うかと思ったら、馬鹿なことを。……目が死んでない。諦めていないのだろう?」
「――っ、当然だ」
そうだ、当然だ。常勝立海に敗北の文字は無い。思わず言葉に力がこもる。
「なら、後は次に当たるまで自分がどうするかって話じゃないのか?」
道を求める事は、自分との戦いだ。
常にそう言い続けている彼女らしい言葉だった。淡々とした物言いが、その言葉を余計に際立たせる。
「勝つんだろ?」
さらりと告げてこちらを見た。
風に揺れる髪の下で、彼女の瞳が挑発的にきらめく。
雲間からのぞいた空から日が差す。それを背に、当然だ、と彼は笑った。
学校20題「12.一枚のフェンスと曇り空」