ソラ駆ける虹

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 頭の中を、ぐるぐると思考が混濁していた。
 拒絶された。それは理解していた。それも、胸を締めつける苦しさの一つだ。悲しい。つらい。でも、それ以上に胸に渦巻いている言葉がある。――同情?
 ……していたのか? 私は。彼に。

 分からない。もしかしたら、していたのかもしれない。
 導師から彼の境遇を聞いた時、驚いたし、納得もした。あれほどそっくりな人間を、見つけられるものなのかと、疑問に思っていたからだ。
 そして同時に、怒りを覚えた。そんな理由で命を作り出した人達にも。身代わりとしての役割や仮面を与え、『彼ら』として生きる道を認めなかった勝手な都合にも。

 同情だったのかもしれない。結局、自分の事ではないから。当事者である彼らにそう言われたら、否定できるほどの根拠を持てなかった。でも、地核の海で、シンクが死んだと聞かされて――。

 心に穴が開いたようだった。人は悲しみが強すぎると、感情が無くなるのだと始めて知った。ただ空虚で。自分がいまここにいるという現実感がまるで無かった。夢の中を生きているようだった。

 そんな中、この町で、彼に再会して。

 嬉しかった。ただ、嬉しかった。生きていてくれて。
 そしてようやく分かったのだ。私は、悲しかったのだと。彼を失うことが、とても、耐え難いほどに、悲しかったのだと。



 あの後、は呼び出された神託の盾(オラクル)によって捕縛された。導師に情報を漏らされないための措置らしい。
 そのまま天幕の一つに軟禁され、見張りも付けられた。だがそれは、正直、意味の無いことだったように思う。何もする気力が沸かなかったからだ。抵抗も、脱出も。何もかも。

 喜び、安堵、衝撃、悲しみ、いとしさ。

 色々な感情があふれて、めまいがして、どうにもならなかった。
 何をどうして。あんな形で告白をしてしまったのかと、衝動で動いたことに赤面して。
 突き飛ばされ、背を向けられた時を思い出して心が痛んだ。

 ぐるぐると色々なことを考えて。
 結局行き着いた場所は変わらなかった。

 ――生きている。
 その事実が、涙が出るほどに嬉しい。彼が、いま生きて、ここにいる。ただそれだけで、不思議なほどに満たされる自分がいた。……例えこの想いが受け入れられなくても。
 それでいいんじゃないかと思えたんだ。



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